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【特別対談】イルグルム 執行役員 廣遥馬氏に聞くデジタル広告の未来≪後編≫

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【特別対談】イルグルム 執行役員 廣遥馬氏に聞くデジタル広告の未来≪後編≫2025年3月19日

生活者と企業が当たり前にデジタルでつながる現代。企業のなかにマーケティング実行体制を保有する合理性、あるいは必然性が高まっています。今回は「データとテクノロジーによって、世界中の企業によるマーケティング活動を支援し、売り手と買い手の幸せをつくる企業になる。」をビジョンに掲げる株式会社イルグルムから、執行役員 廣遥馬氏をゲストに迎え「デジタル広告の未来」について話を聞きました。

株式会社イルグルム執行役員 廣 遥馬

株式会社イルグルム執行役員 
廣 遥馬 氏

2016年、株式会社イルグルムに新卒入社。広告代理店向けの営業に従事したのち、2年でマネージャーに昇格。その後、人事戦略部門を立ち上げ、責任者として採用、教育、評価制度などの改革を推進。2021年、再び事業部門に戻り、現在はマーケティングDX支援サービスの本部長として、マーケティング、セールス、サクセス、サポート部門を管掌。大規模カンファレンスやセミナーへの登壇多数。2024年10月、執行役員に就任。

株式会社メンバーズ フォーアドカンパニー カンパニー社長 田中秀和

株式会社メンバーズ
フォーアドカンパニー
カンパニー社長 
田中 秀和

ベンチャー企業にてIT事業の新規立ち上げ、事業拡大に貢献。2008年にWeb事業にて独立し、2012年に事業売却。その後、事業会社にて事業・経営に対する戦略立案に従事。Webの知見をもとに業界課題を改善した実績が認められ、セミナーへの登壇や業界紙への寄稿を行う。メンバーズに入社後は、金融系企業のデジタル支援PJTや、銀行のDX内製化に向けた高速アジャイルチームの立ち上げ・運用などのPJTを兼任し、2024年にフォーアドカンパニー社長に就任。

≪前編≫ではデジタル広告業界とデータ規制について話をお伺いしました。≪後編≫では、規制のcookie規制やデータの活用によって求められる組織変革、そしてデジタル広告の未来についてお話をお伺いします。

代理店に求められる役割の変化

田中 今後、マーケティングデータを自社で保管することが重要になるなかで、御社のプロダクトの直販比率も徐々に上がっています。こうした状況において、デジタル広告の内製化についてはどのようにお考えですか?

廣 当社のお客さまの間でも、そのような話はよく出ます。従来は代理店に委託するのが一般的でしたが、自社で内製化を進めたいという相談や、すでに内製化を実施している企業も増えてきました。しかし、すべてを自社で賄うのは難しく、専門知識も必要になります。そのため、ビジネスの拡大を真摯に支援できるパートナーの価値が、今後ますます高まると考えています。その一つの形として、メンバーズさんの内製化支援があるという整理ですね。

田中 ありがとうございます。御社のサービスを利用している企業は総じてリテラシーが高いと感じています。広告の成果に疑問を持たなければ、御社のプロダクトにたどり着かないはずですから、本質的なビジネス成果にどのように寄与しているのかを明確にしたい企業が多いのではないでしょうか。デジタル広告はあくまで手段の一つに過ぎず、企業が主体的に意思決定できる体制が理想的だと考えます。ちなみに、直販のなかでのインハウス比率はどの程度でしょうか?

廣 まだ多くはありませんが、ほぼゼロだった状況から内製化に切り替えた企業や、内製化を目指している企業が増えています。そのため、今後インハウス比率が高まる可能性は十分にあると考えています。

田中 当社も今期から事業を開始したばかりですが、顕在的にも潜在的にも内製化のニーズを強く感じています。その結果、支援枠がすぐに埋まってしまう状況になりました。廣さんのお話にあった法改正や媒体の進化などが影響しているのでしょうか。

廣 その影響は大きいと思います。適切なマーケティング活動を継続するには、自社データを自社で保有することがもっとも重要なポイントです。また、従来の広告運用業務を単に外部委託することへのコスト意識が高まっています。代理店の価値は、豊富な運用知識による品質向上と、外部リソースを活用した時間の節約にあります。しかし、機械学習の進化により運用品質の差が縮まり、代理店が提供できるメリットが減少しています。そのため、正しくデータを蓄積し、媒体にフィードバックすることがより重要になっています。加えて、生成AIの普及により、広告運用業務の一部が自動化されることで、代理店に求められる役割が変化していると感じます。

unknownデータと個人データの境界線

廣 MAやCRMのデータと広告の流入データを統合したいという要望が増えています。基幹データと流入元データを統合し、顧客理解を深めたうえで次の施策につなげる。いわゆるCPA※1ではなくCPO※2を重視する動きですね。

※1 Cost per AcquisitionまたはCost per Actionの略。 広告によって誘導されたユーザーが、広告主サイトで会員登録や商品購入など、特定のアクションにいたった回数(1回)当たりの費用。

※2 Cost Per Order の略で、新規顧客による受注1件にかかった広告費を意味するKPI。 新規顧客に商品・サービスを購入してもらうための新規顧客の獲得単価。

田中 ユーザーベースの獲得単価をチャネル別に分析し、真に成果が出ているコミュニケーションチャネルを可視化したいということですね。顧客ナーチャリングの観点でMAを社内運用する企業が増える一方、広告運用は外部委託されるケースが多いです。しかし、これらを一気通貫して運用できたほうが精度も機動力も高まると考えます。エンジニアリング領域では外注から内製化への流れが進んでいますが、デジタルコミュニケーション領域も同様の動きが加速するのでしょうか。

廣 unknownデータと実名が出る個人データでは、外注のしやすさに違いがあります。ただ、マーケティングの高度化に伴い、その境界線は曖昧になりつつあります。結局、統合的に運用しないと成果につながらなくなってきた、ということだと思います。

田中 広く一般的な手法を活用するのと、自社データを有効活用するのとでは、差別化の観点で大きな違いが生じます。データ活用の成功事例として、具体的にどのようなものがありますか?

廣 例えば、アドエビスで計測した広告データと、広告主が保有するCRMデータを紐づけて分析することで、商談数が前年同月比200%増を実現したBtoB企業があります。これはまさに、広告データと自社データを効果的に掛け合わせた成功事例といえるでしょう。

現在の組織に求められる変革

廣 内製化にはいくつかの壁があります。計測の課題や専門知識の不足など、自社で完全に対応するのは難しい。そのため、メンバーズさんのような内製化支援企業の存在が重要になります。また、ツールを活用する場合、自社開発するよりも既存の専門ツールを利用するほうが現実的でしょう。

田中 正しい計測環境を整備し可視化する。さらに、デジタルマーケティングのPDCAを適切に回すためには、デジタルKPIの設定が不可欠です。施策の成果を正しく評価できなければ、最適な判断ができず、結果としてマーケティングの進化が停滞します。

廣 おっしゃる通りです。データの可視化は顕在ニーズですが、その後のアクションまで考えることが重要です。当社はツールベンダーであり、カスタマーサクセスだけで支援するには限界があります。お客さまのビジネスを理解し、適切なデータ活用を支援するパートナーの存在が不可欠です。さらに言えば、離職リスクや体制変更などのハードルもあり、人に依存してしまうのはリスクです。

田中 個人ではなく、組織にスキルや知見をトランスファーすることが重要ですね。人に依存してしまうと、その人がいないと回らない組織環境になってしまう。キャリア採用で内製化した企業が陥りがちな問題ですが、属人化により外部から内部にブラックボックスが移動しただけで、結果としてその人のフィーを上げていくしか体制維持の方法がなくなってしまうようなケースもありますね。

廣 私たちが向き合っているお客さまのニーズは、「デジタル広告を含むマーケティング施策の効果改善サイクルを継続的に回したい」というものだと定義しています。
重要なのは、この仕組みを特定の個人ではなく、組織全体の能力として確立することです。誰かが退職しても、新たなメンバーが加わっても、同じように運用できる状態が理想です。そのためにも、全体を理解し、継続的に伴走してくれる存在がいると安心感がありますよね。

田中 広告媒体側の機械学習の精度が向上するにつれて、マーケターに求められる役割も徐々に変化しています。そのなかで、広告運用における差別化は一昔前と比べるとかなり縮小しました。広告の最適化に必要な計測やデータ環境は、法改正や御社のようなプロダクトの台頭により、直販化が進むなかで、その持続可能な体制をどう作り上げるかが、現在の組織に求められる変革の一つだと思います。
社内組織として編成をするため、中長期的なビジョンやキャリアプランを、しっかり作っていく必要があります。少人数のチームで今後20年間運営を続けるといった形だと、どうしても属人化してしまうため、スケールを出さないといけません。ビジョンを実現するために、どのように組織を拡大していくかという方針を立て、それに基づく「内製化」であれば、組織としても機能しますし、支援形態も明確に見えてきます。我々がパートナーシップを組む際には、こうしたビジョンの部分から一緒に取り組むことが多いです。

廣 よくある広告運用の場合は、広告担当者さまの目標から逆算してミッションが決まるため、そこのアプローチがやはり全然違いますね。

田中 企業として、マーケティングやデータの重要性を正しく理解したうえで、インハウス体制を一緒に創り上げるという意思決定をしていただけるかどうかは、私たちパートナーとして選定される上で非常に重要な基準の一つです。この点をしっかりと見極め、ともに進んでいける企業とパートナーシップを組むことを大切にしています。

IMPACT ON THE WORLD

田中 そのような移り変わりの早い広告業界ですが、これからどうなっていくと思いますか?

廣 cookie規制やデータ活用の進化により、ターゲティングと計測の在り方が大きく変わると考えています。ターゲティングはコマースメディアやリテールメディアの台頭なども含めて、手段が整備されつつありますが、計測はさらに複雑化すると予想されます。3rd Party Cookieの規制が進むなか、適切なデータ活用ができないと混乱する企業が増えるでしょう。我々は、企業が事業成長していくための広告のサポートをしているので、これからも効果測定のトップランナーとして貢献していきたいですね。

田中 廣さんご自身の展望はどうお考えですか?

廣 実は、生活者視点では広告はあまり好きではありません(笑)。欲しい情報が届かないことが多いからです。
ですが、私は広告業界には強い魅力を感じています。広告があるからこそ、多くのサービスを享受できるし、広告は、世界経済を支える重要な産業だと考えています。だからこそ、ユーザープライバシーに配慮した広告効果測定を通じて、ユーザーに好かれる広告を増やすことで、業界の発展に微力ながら貢献したいです。

田中 とても深いですね。生活者としての視点では広告が嫌いで、仕事としての広告は好きだということにはギャップがありますよね。そのギャップが解消されれば、生活者としての廣さんも広告が好きになるのではないでしょうか。つまり、広告そのものをより良い体験に変える可能性があると感じました。それを、データやテクノロジーの力でコミュニケーションを最適化し、解決するというところに、廣さんの未来があるのでしょうね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

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