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【新潮デジタル広告/特別対談】株式会社リチカ 代表取締役松尾 幸治氏に聞くデジタル広告の未来≪後編≫

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【新潮デジタル広告/特別対談】株式会社リチカ 代表取締役松尾 幸治氏に聞くデジタル広告の未来≪後編≫2024年10月22日

生活者と企業が当たり前にデジタルでつながる現代。企業のなかにマーケティング実行体制を保有する合理性、あるいは必然性が高まっています。「 クリエイティビティで、世界を豊かに。」をミッションに掲げ、広告クリエイティブの制作&運用ができる「RICHKA CLOUD」を始め、AI軸でさまざまなプロダクト開発・提供をする株式会社リチカ。大手VCなどから20億円以上の資金調達も実施し、躍進を続けています。【新潮デジタル広告】の特別対談企画として、同社代表取締役社長松尾幸治氏に「デジタル広告の未来」について話を聞きました。

株式会社リチカ代表取締役 松尾 幸治 氏

株式会社リチカ代表取締役 
松尾 幸治 氏

1989年生まれ。佐賀県出身。横浜市立大学卒業後、「日本の社長tv」を運営する株式会社ディーノシステムに参画。 取締役運営本部長としてプロダクト、クリエイティブ、マーケティングなど広く従事し、2年で5,000社の新規開拓を牽引。2014年に株式会社リチカを設立。累計10億円以上調達しながら、「クリエイティビティで、世界を豊かに。」する動画広告の自動生成AIを開発。AIの力で人はもっとクリエイティブな仕事ができる未来を。22年度すごいベンチャー100掲載。

株式会社メンバーズ フォーアドカンパニー カンパニー社長 田中秀和

株式会社メンバーズ
フォーアドカンパニー
カンパニー社長 
田中 秀和

ベンチャー企業にてIT事業の新規立ち上げ、事業拡大に貢献。2008年にWeb事業にて独立し、2012年に事業売却。その後、事業会社にて事業・経営に対する戦略立案に従事。Webの知見をもとに業界課題を改善した実績が認められ、セミナーへの登壇や業界紙への寄稿を行う。メンバーズに入社後は、金融系企業のデジタル支援PJTや、銀行のDX内製化に向けた高速アジャイルチームの立ち上げ・運用などのPJTを兼任し、2024年にフォーアドカンパニー社長に就任。

≪前編≫ではデジタル広告業界の変化とクリエイティブの進展について話をお伺いしました。後編では、デジタル広告の内製化とこれからのクリエイターが目指すべき指針、デジタル広告の未来についてお話をお伺いします。

広告クリエイティブの民主化

田中 動画マーケティングをサポートするリチカクラウドは、広告代理店に使ってもらうことが多いのでしょうか?

松尾 まずは目線が厳しい代理店側に先に使ってもらい、意見をいただいてから事業者側に公開するということを意識的におこなっていました。なので今までは代理店が多かったのですが、これからは事業会社側に広げていきたいと考えています。

田中 これまで動画制作は、各領域のプロフェッショナルが担っており比較的高価なものでした。ですがリチカでは、テクノロジーの力で誰もが簡単に制作できるという「クリエイティブの民主化」を推進している印象があります。実は我々も事業立案時の裏コンセプトとして「広告の民主化」を掲げていました。マーケティング機能の内製化についてはどうお考えでしょうか?

松尾 私たちのコンセプトも「民主化」です。現在作っているプロダクトは広告のクリエイティブの自動化ですが、もう少し広い領域まで内製化を支援したいと思っています。

一方で、インハウス運用には段階があります。副業人材を採用して内製化している企業や、Who、What、HowのWho、Whatを自社で企画し、Howのオペレーションはアウトソースを使っている企業も存在します。

内製化は当然進みますが、段階的であり、どう進めていくかはもう少し議論されても良いと思います。

田中 おっしゃる通り、内製化の定義は各社バラバラです。我々が思う内製化の定義は、どちらかというとマーケティングのハンドルを企業が握っている状態を指します。これにより、段階に応じて内製部分とアウトソース部分の選択が可能になります。

テクノロジーの進化によりコミュニケーションがデジタルシフトするなかで、企業側がユーザーとのコミュニケーションをメインにするのであれば、責任を持ってコントロールできる状態が正しい内製化の姿だと思います。そのためには、デジタルマーケティングのプロセス理解と、経験が必要だと思います。

クリエイティブの内製化はリチカクラウドで実現できると思うのですが、松尾さんはクリエイティブ領域はどこまで見据えられているのでしょうか。

松尾 当然システムなのでできることとできないことはあります。どこまで内製化して、どこまでをプロフェッショナルが担うのか、広告運用と考え方は一緒だと思っています。

一方で、完全に自分たちでツールを使わずにやろうとすると、デザインスキルをはじめ、マーケティング業務や媒体のトレンドについての理解が必要になります。

インハウスマーケターが陥る罠としては、例えばMeta広告にだけ詳しくなっていき、会社全体の知見もMetaに寄ってしまうことなどが挙げられます。そのため、マーケットの知識を横断的に把握してるプレイヤーに、フォーアドカンパニーやリチカがなれるといいなと思っています。

デジタル広告内製化の「ひみつ道具」

田中 機械学習の進化により、広告の運用手法で大きな差がつきづらくなる世界で、私もクリエイティブこそ重要だと認識しています。かつ、広告クリエイティブのみならず、LPでの訴求軸やアプローチ、しいて言えばプロダクト、サービスまで踏み込まないと成果は担保できません。

例えばDtoCの場合、過剰な初回割引によるチャーンが課題になっています。この場合って広告の成果はよくても、多くの企業が追っているのは売上・利益なので、ビジネス成果としては微妙です。その矛盾を解消してビジネス成果を正しく追うために、マーケティングの内製化は合理的な判断といえます。

昨今のデジタル広告の運用領域は、ビジネス人材にスキルトランスファーしやすい領域だと思っているのですが、企業によってクリエイティブの内製化に関する考え方は異なっています。そのあたりはどのようにお考えですか?

松尾 企業は必ずしも内製化する必要はないので、マーケターもクリエイターも、一つの会社に定着しない生き物だと考えています。本人のスキル的にも定着しないほうがよく、うまくパートナーを活用する選択肢も残したほうがいいと思っています。

外部に頼らなくてもよい領域から内製化し、PDCAを回す上での課題解決は、私たちのプロダクトや、Canvaなどの外部ツールを使って自社でやればいいと思います。コンセプトの策定やCPA、CPCに効いてくる施策に関しては外部と組むなど、チームビルディングがうまくできていない企業が多いように感じます。

田中 マーケターが定着しないというのは非常に同意しながら聞いていました。なぜなのでしょうか?

松尾 マーケターの次のキャリアとして、代理店か事業会社のどちらかに行くという話がありますが、事業会社に行った人は戻ってくることが多いですね。

自社のプロダクトを心の底から愛せていないと、事業会社のマーケティングのみでキャリアを作るのは難しいでしょう。加えて、インハウスマーケターのキャリアを突き詰めるとCMOなどがアッパーになります。つまり、マーケティングをやればやるほど、途中からデジタルマーケティングや広告ではなく、PLなどの経営の話が中心になります。

田中 やりたいことと役割のギャップが生まれてしまうので、長続きしないということですね。

今後は、本来プロフェッショナルに頼まなければいけなかった領域が、AIの力でできるようになります。御社のプロダクトを使うと、動画を作れない人が動画を作れるようになるという、ある意味タケコプターみたいなものだと思っています。マーケターを社内で定着させるのではなく、すべてのビジネスパーソンがマーケティング力を高めるべきという思想が根底にありますよね。

マーケターやクリエイターの思考ではなくても、RICHKA CLOUDを使えば誰でもそれを実践できる。一億総クリエイター時代における、広告運用の課題解決がワンストップで叶う、内製化のひみつ道具のようなものだと捉えています。

松尾 ありがとうございます。あとで社内Slackに投稿しておきます(笑)

あとはクリエイターが辞めたタイミングで、資産の問題やデザインツールの使用経験など、ノンデザイナーが入ってきた場合、次の担当者が運用できないという問題が散見されます。そういったことに左右されず資産として残っていくことは、ツールの良いところだと思います。

クリエイティブはデジタル広告内製化のラストワンマイル

田中 従来の広告でいうと資本力が強い企業が勝つ世界でしたが、今後はルールが変わる気がしています。企業の資本力に左右されることなく、適正に自社の価値を届けることができる。かつ従来のコストやスピードなどの課題が解決されると、生活者であるユーザーが享受できるベネフィットも大きいと考えています。

意思決定の面も含め、品質やサービス面、価格転換すら可能になると、我々のやっていることの価値は、非常にインパクトがあると考えています。

松尾 そのあたりまで担っていきたいですね。コミュニケーションの本質は1対1ですが、実際にはコストや技術などさまざまな制約のなかで、1対nのコミュニケーションになっています。制約の一つは制作コストなので、それは壊していきたいと当初から思っています。

誰が見ても違和感を持つ広告は昔からありますが、ユーザーが欲している情報に正確に辿り着くアルゴリズムの技術が進化しているからこそ、そこにコンテンツが追いついていかないといけません。あまりやっているプレイヤーがいないので、使命感があります。

田中 アルゴリズムに沿ったスピードと品質で、常にコンテンツも改善してアジャストしなければならないですよね。広告運用は内製化するものの、動画は高いけど外注しているようなケースも多くあるので、クリエイティブこそ内製化のラストワンマイルな気がします。広告運用に加えてクリエイティブを内製化することで、柔軟に、そして機動的に広告運用のPDCAを高速におこなうことができますよね。

デジタルマーケティングを誰でもかんたんに。

田中 難解といわれるクリエイティブテックで、多くの企業に支持されている御社のサービスは流石だと思います。従来は広告に限らずというところから、デジタル広告にピボットしてPMFされたそうですが、松尾さん自身の今後の展望などをお伺いしてもよろしいでしょうか?

松尾 プロダクトのミッションで「デジタルマーケティングを、誰でもかんたんに。」ということを打ち出してしています。私自身がマーケターではなかったからこそ、クリエイティブは難しいと感じています。

基本はWho、What、Howのように、必要としている人に対して、その人が欲しいものを提供することが本質です。それが難しいのか、誰かが難しくしているのかはわからないですが、非常に複雑なものになっています。

いろいろな領域において機会損失を生んでいるため、是正していきたいですし、その中心が私たちのプロダクトでありたいと考えています。

AIの進化は勝手に進んでいますが、極論をいうと私たちのプロダクトを使わなくてもAIを活用することで実現可能だと思います。しかし、それができるのは5%〜10%の人たちだけで、残りの約90%の人は取り残されてしまいます。

その取り残されていくであろう90%の人たちにとって、必要なサービスであるということが大事であり、そうなるようにプロダクトを作り込んでいきたいですね。

ですがプロダクトだけではなく、システムでカバーできないところは「やっぱり人だよね」といわれるクリエイターやマーケターたちが、世の中に増えていくといいとも思っています。

田中 誰一人置いていかない思想、とても素晴らしいです。小難しくなっているというのは私も同感です。デジタル社会においては、数値やデータが明確に出ているにも関わらず、それをより複雑で難解なものへ昇華させる力学がどこかで働いていて、内製化の障壁にもなっていますよね。

広告の機械学習に合わせて、疲弊する動画やバナーなどのクリエイティブをアジャストしていくには、労働集約型というマンパワーで解決するか、クリエイティブもAIやプロダクトを使って解決するという選択肢になってきます。そのなかで、おそらく後者のほうが機械学習との親和性が高いですし、前者だとクリエイターが疲弊してしまいます。

そうなったときに、クリエイターの未来、特にデザイナーの未来はどのように考えていますか。

松尾 日々のPDCAで疲弊しているような職種、デザイナーというよりはデザインオペレーターという仕事はなくなると思っています。今後、デザイナーとしてあるべき業務は、作業をするのではなくデザインで課題を解決するようになるでしょう。いわゆる上流、仕事のコアな部分になるので、そのようなデザイナーが生き残り、求められるように変わると思います。

最近のインフルエンサーもそうですが、マーケターやクリエイターの境目がなくなってきており、セールスマンでありマーケターでありクリエイターでもあるように感じています。こういったマルチスキルを持つ人たちが、今後重宝されていくとすると、手を動かすのがデザインの仕事だと捉えるよりは、広くさまざまな領域に踏み込んでいく必要があります。

クリエイティブとテクノロジーの力で社会変革に挑戦

田中 リチカのようなAIのプロダクトを見て、将来自分の仕事がなくなるのではという危惧を持っているデザイナーも多いと思います。

松尾 人が作るところまで到達しているかというと、まだまだそこまではいけていないのが現実ですが、そう言っていただけると嬉しいです。烏滸がましいかもしれませんが、そのデザイナーは、すごく優秀な方だと思いますよ。

最近はなくなってきましたが、リリースした当初は、「デザインの仕事を舐めるなよ」や「クリエイターの仕事を舐めるな」と言われていましたが、やりたいことはそういうことではありません。

田中 やはり反発もあったのですね。とはいえ、広告領域でいうと施策の「数」に勝る力はないと思います。従来の型を踏襲する限り、AIの力には勝てない。松尾さんのいう通り、今後はAIがすることと人がすることは、より明確にすみ分けられてくると思っています。

従来であれば、企業の育成施策のなかでバナーは若手に制作させるといったキャリアステップが形成されていましたが、デジタルコミュニケーションがメインストリームに変わっていくなかで、スピード感が合わなくなり、デザイン界隈も過渡期を迎えていますよね。

松尾 デザイン界隈は定期的にXで炎上していますよね。中堅のデザイナーが若手とバトっていたり、YouTubeでも運用サイドとマーケサイドがバトって炎上していたり。ついにここまで来たかという感じですよね。

田中 広告業界全体が過渡期であり、コミュニケーションのあり方そのものが変わってきているなか、クリエイティブとテクノロジーの力で社会変革に挑戦されているお話を伺えて、我々のミッションとの親和性を感じました。貴重なお話をありがとうございました。ちなみに、まだCOOは募集されていますか。

松尾 はい、お待ちしています。

対談終わりに「あれ、これってCOOの面接だったっけ?」の一枚

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