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【特別対談】株式会社Shirofune取締役 竹下 智視氏に聞くデジタル広告の未来≪後編≫

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【特別対談】株式会社Shirofune取締役 竹下 智視氏に聞くデジタル広告の未来≪後編≫2024年8月29日

生活者と企業が当たり前にデジタルでつながる現代。企業の中にマーケティング実行体制を保有する合理性、あるいは必然性が高まっています。【新潮デジタル広告】の特別対談企画として、広告運用自動化ツールを開発する株式会社Shirofuneの創業メンバーである竹下 智視氏をゲストに招き、「デジタル広告の未来」について株式会社メンバーズ フォーアドカンパニーの田中が話を聞きました。

株式会社Shirofune 取締役 竹下智視氏

株式会社Shirofune取締役 
竹下 智視 氏

京都大学時代の卒論でリスティング広告を研究。サイバーエージェントに新卒で2007年に入社し、約10年間、一貫してリスティング広告運用の業務に従事。 広告運用における社内育成の仕組みづくりや、初期構築専門の部署の設立、運用ルール・オペレーションにおける社内ルールの設計、および組織づくり等を行う。 株式会社Shirofuneでは、主にアカウントの構築・改善施策部分の独自アルゴリズムの研究・開発、およびカスタマーサクセス領域を担当。

株式会社メンバーズ フォーアドカンパニー カンパニー社長 田中秀和

株式会社メンバーズ
フォーアドカンパニー
カンパニー社長 
田中 秀和

ベンチャー企業にてIT事業の新規立ち上げ、事業拡大に貢献。2008年にWeb事業にて独立し、2012年に事業売却。その後、事業会社にて事業・経営に対する戦略立案に従事。Webの知見をもとに業界課題を改善した実績が認められ、セミナーへの登壇や業界紙への寄稿を行う。メンバーズに入社後は、金融系企業のデジタル支援PJTや、銀行のDX内製化に向けた高速アジャイルチームの立ち上げ・運用などのPJTを兼任し、2024年にフォーアドカンパニー社長に就任。

≪前編≫ではデジタル広告業界の変化と広告内製化の進展について話をお伺いしました。後編では、デジタル広告の内製化とこれから企業として考えるべきマーケティング戦略、デジタル広告の未来についてお話をお伺いします。

自分たちの商材や業界のことを、自分たち以上に代理店が理解している状態はない

田中 具体的にインハウス化した成功事例を教えていただいても良いですか?

竹下 例えばBtoB業界で重要な商材を扱う企業の担当者からの話ですが、広告代理店は広告運用のプロであるものの、自分たちの商材や業界のことを自分たち以上に理解していることはなかなかない。かつその商材や業界がコアなものの場合、よりその差が大きい。このギャップによって、マーケット理解や、デジタル広告の展開、期待するデジタル集客がスピーディーに実行できないところにとても課題を感じられていました。

社内では商材・業界の知識はあるものの、デジタル広告のことは良くわからない。デジタル広告を内製化することができれば、理想のマーケティング活動ができるようになるのではないかというご相談をいただきました。商品の魅力を知ってる社員の方が、Web広告の知識や知見がなくてもスムーズに広告運用が行えるパーツを、ツールとして補うことで、現状を改善し成果を上げ、かつ社内に知見が貯まる、という取り組みをご一緒させていただきました。導入半年後ぐらいに、実際に担当者の方へお話をお伺いする機会があったのですが、最初おっしゃっていただいた課題が解決され、望まれた成果が実現できたとのことで、これは非常に良い反応だったと思います。

内製化のその先に、もっと大きな果実がある

田中 事業の意思決定や判断とマーケティングのスピードには少なからずズレがあるのが一般的で、そこの誤差をできるだけ少なくすることが、事業の成長、グロースの観点でもおそらく一番のポイントだと思います。そこが解消できた良い成功事例ですね。

Shirofuneのツールを利用して内製化する企業も、コスト面より成果や事業拡大などの意思を持つ企業が多いのでしょうか?

竹下 そこに魅力を感じていただいた上で一緒に取り組むケースのほうが、僕らも良いと思っています。当然ビジネスなので、短期的にCPA改善する、手数料が安くなるなどの、目に見える数字は必須で、これがなければ採用されず、長続きもしません。ただコスト削減だけを目的とするなら、わざわざ内製化をしなくてもパートナーを変えるなどの手段もあると思います。

内製化という観点でいくなら、その先にあるもっと大きな成果を目指し、一緒にチャレンジするということが、すごく大事な視点なんじゃないかなと思っています。

田中 おっしゃる通りです。コスト面だけで内製化の意思決定をされる場合は、取り組みの姿勢が少し違うなとも思うんですよね。

竹下 ツールベンダーとしては若干難しいところあるんですけど、内製化と言ってるのにツールに任せるみたいな(笑)。そこを自動化してるのでそういう風になりがちではあるんですけれど、でもそれって結局アウトソース先が代理店からツールになっただけで、それは内製化ではないなって思ってはいます。

田中 ビジネス上で達成させたいゴールがあって、それを達成させるための手段ではあると思うので、選択肢の中の一つとして上手く手段として取り入れて活用いただくのが良いですよね。

デジタル広告は代理店に任せるもの。その前提を疑ったときに、切り開ける未来や成果があるんですよね。コストの面で言うと、内製化することで広告宣伝費のポートフォリオが抜本的に変わるじゃないですか。それを単純にコスト削減で終わらせるんじゃなくて、本来やりたかったDXとか成果拡張とかをどんどんチャレンジして、うまく回っている企業こそ本質的に成果が創出できているように思います。我々が支援させていただいている企業の担当者さまは口を揃えて、内製化こそ広告運用の最適解だと仰っていただいていますよ。

正しい手順を踏んでやらないと、内製化メリットがそのままデメリットに転換する

田中 我々も良く聞かれるのですが、具体的にデジタル広告内製化を進めるにあたって、推奨する実践的なステップはありますか?

竹下 まずはスモールスタートすることが重要だと考えています。デジタル広告にはさまざまなメディアがあり、予算規模が大きくなるほど業務が複雑になります。そのため、まずは取り組みやすい部分から始めることをお勧めします。

田中 特にデジタル広告予算が大きい会社であればあればあるほど、内製化にいきなり体制を切り替えるのは、なかなか難しい意思決定になりますよね。一部媒体なのか、プロダクトみたいなところから小さく始めてみて、その成功体験を積み上げることが、導入しやすくリスクも最小限に抑えるステップですね。仮に外部委託に戻す場合も、おそらくスムーズですしね。逆にスモールスタートでのハードルってあったりしますか?

竹下 開始するまでと運用の質ですかね。昨今でいうと教育コンテンツとか知識だけを先に入れるみたいなものって、結構世の中にコンテンツたくさんあると思うんですけど、どんな分野もそうだと思うんですけど、結局実務がないと血肉化しないんですよね。実際に広告運用を実務で進めようとしたときに、何を準備し、何をリスクヘッジとするのかみたいなことを、しっかりスキルトランスファーする必要があるんだろうと思っています。

田中 実務がないと血肉化しないというのは、まさにそうだと思います。我々も竹下さんと同じ思想で、どれだけ場数を踏んだかという経験こそもっとも重要だと考えていて、自身で意思決定や判断をした回数やそこに至るまでのトライアンドエラーを通して、培っていくものがスキルだと思うんですね。なので、あくまで座学やOFF-JTについては、OJTで不足する知識を補填するものと捉えていて、経験値がもっとも重要なファクターだと考えています。

竹下 それを僕らのようなツールで担保するのもまた然り、メンバーズさんのような、広告内製化の支援をサービスとして展開されているところとパートナーシップを組んで、しっかり中長期的にそれを形にしていくことも必要だと思います。その体制実現のために必要な、失敗しないための投資を最初の段階で、初動からきちんと考えるみたいな、そういう意思決定が必要なんじゃないかなと思います。

田中 そうなんですよね。中途半端に独力で何とかしようと始めてしまうと、失敗するケースのほうが多いんじゃないかなと思います。正しいやり方を、正しい手順を踏んでやらないと、運用品質とかスピード感とか、内製化のメリットがそのままデメリットに転換してしまう場合もあるんですよね。内製化を正しい手順で行えていれば、本来であれば改善されたものが改善されなかったみたいな結論になるのも、企業にとっては機会損失だと思いますね。

竹下 短期的な視点からアプローチすると、かかるコストが高くなることや、CPAの観点から見た議論になりがちです。その視点をクリアするためのアクションは一緒に考えて用意しつつも、それを超えた先には、トライアンドエラーを経て得られる大きな成果があります。その大きな成果にチャレンジするためには、企業内でストーリーを構築し、必要なアクションを選択していくことが重要です。一緒にそのアプローチを計画し、実行していく必要があると考えています。

田中 より中長期的な目線で企業がどうありたいかということを描出し、そのプロセスを通して一緒に成長していくことが大切ですよね。対談だからということもありますが、竹下さんにメンバーズの名前を出していただいて大変嬉しいです(笑)

竹下 ハンズオンでの支援を超えて、足元だけじゃなく、将来の設計も一緒におこなうことが重要で、それをメンバーズさんは意識されてるじゃないですか?その将来の設計図があるからこそ、今ここに力をかけることが意味を成すので、そこまで含めて一緒にやられるっていうのは、従来の内製化支援とは全然違う話だと思っています。

田中 たしかに、デジタル広告で売上を追っていたら、内製化は推進しないですよね。おっしゃる通り、我々はカスタマーサクセスに注力をしていて、広告領域含めてデジタルでのマーケティングを伴走することで、お客さまと一緒に成功体験を実現するということをすごく意識しています。

デジタル広告業界の MAKING THE ROAD

竹下 デジタル広告の支援側からすると、自動化やターゲティングの制限によるネガティブな影響が多く語られますが、これらの課題をどう補うかが重要だと思います。既存の方法が機能しなくなってきている一方で、デジタル化やDXは進化を続け、これまでの最適化を超える新たなアクションが始まっています。このような変化に対して、ちゃんとそこをやるという意思決定をし、チャレンジしていくべきなんじゃないかなと思っています。大抵、こういったトレンドは動いたほうが成功することのほうが多いので。僕らもデジタル広告に携わる者として、少しでもそういう企業が増えるように、内製化という手段を現実的に事業会社に提示をすることが必要なんじゃないかなと思っています。

これは内製化が正解で、広告代理店が不要になるとか、そういった議論の話ではなく、選択肢が増えることで、お互いがせめぎあい、より良いサービスを早く作り上げていく、という動きにつながっていくという観点で重要なことだと思っています。

田中 多くの事業会社は、インターネット広告費が年々右肩上がりに上がっていく中で、代理店側の対応とか体制とか、サービスのクオリティが大きく変わらないことに対しての不満が顕在化してきているんですよね。ただそこは、代理店がというよりも手数料ビジネスという形態の限界が顕著に現れてきているわけです。

しかし、おっしゃる通りで代理店には代理店の価値がある。既存の概念を一度崩すことで、新たな価値創造が生まれると思っていて、広告代理店ってそういったリソースもポテンシャルも持っていると思っています。上手くインハウスとの競争構造をつくることで、業界的にもう一つ進化する可能性はありますよね。

竹下 魅力的にならないと、いい人材や意欲のある新卒が集まってこない。むしろ他の業界に流れてしまうので、新たなチャレンジや挑戦をすることで、もっと業界を盛り上げていかないといけないと感じてます。デジタル広告の支援に携わるプレーヤーとして、色々な角度からの活動を増やし、結果的に全体で前に進んでいくことに貢献できれば、すごくよいことだなと思っています。

田中 デジタル広告運用の人材って、結構疲弊も早いですよね。そのあたりもきっと業界的に変えたいポイントのひとつなのかなと思っていて、もっと広告の楽しさであったり、その先のカスタマーサクセスみたいなところを見据えたときに、実はやれることはたくさんあって、その先の社会へのインパクトなど可能性はすごく大きいんですよね。日々のルーティンが決まっていって、数値を確認して調整してレポートを作って…ということよりも、何かそれをもう少し視座を変えてクリエイティブな業務に変えることが大切だと思っています。

内製化という選択肢が一般的になる未来

現在の広告運用体制についての調査結果詳細 株式会社Shirofuneより

出典:株式会社Shirofune/BtoB企業のデジタルマーケティングにおけるWeb広告運用体制

田中 「BtoB企業のデジタルマーケティングにおけるWeb広告運用体制」調査によると、代理店運用との併用を含めると、もう既に半数以上の企業がインハウスを選択されてるのですが、竹下さんとしてはこの先どうなると思います?

竹下 メインストリームになるかどうかはわかりません。ただ、代理店に外部委託するという選択肢に対して、それと同じぐらい内製化という選択肢が一般的になるようなところまでは成長してほしい、と思っています。

デジタル広告が単に補助的な役割だと考えるなら、アウトソーシングは合理的な手段だと思います。しかしそれが、事業の中心にくる場合、本当にアウトソースが良いのか、という話は絶対出てくると思います。

過去、エンジニアのリソースは基本的にアウトソースされていましたが、今では多くのシステムが事業の中核を成し、多くの企業がエンジニアを直接雇用して、自社サービスを開発しています。広告業界においても、それと同じような変化が起こりつつあると感じています。

田中 現在は生活者と企業は、デジタルで直接的に繋がっていますしね。ユーザーのデジタルシフトは加速しているし、社会やテクノロジーの進化によって環境も大きく変わりゆく中で、企業としてどう捉え、体制を作っていくのかっていうところが大きなポイントですよね。内製か内製ではないかというよりは、その意思決定が正しくできるようになるのが一番大切。デジタル広告だけというよりは、自社のマーケティング機能をどう社会に適応させていくかということなんですよね。

未来を見据えた変革が、デジタル広告業界の未来に繋がる

竹下 デジタル広告業界自体、約20年ぐらいの歴史しかなく、その間に新しいチャレンジ・アプローチをすごいスピードで取り入れながら、発展してきたと思います。そして今またルールが変わるような、大きな変化に直面しており、そこに適応することが非常に重要です。そのためにも、今までの成功体験を一時的に脇に置き、柔軟なスタンスで取り組むことが重要だと感じております。

田中 ある意味では、代理店としては太いお客さまがいれば、そこのサービスをブラッシュアップしていけば、それはそれでいいじゃないですか。そういう意味では、大きな企業こそ内製化の意思決定はかなり難しいのではと考えているんですがどう考えてます?

竹下 どうなんでしょうね、やるべきだとは思いますが、難しいだろうとは思いますよね。だからこそ、部分的になんだと思います。内製化したほうの果実が大きいのは間違いないですよね。単純に月間1億円の20%だとすると、2,000万の手数料を設定するようになっているので、それが仮に人件費換算で4、5人とかでいい話だったら、もうそれだけで年間1億円とかコストカットできる、次に何か投資できるという話になるじゃないですか。これって粗利で1億稼ぐという話じゃないですか。

田中 やろうと思えばやれるはずだし、大企業ということはネームバリューもあるので採用もできるということだと思うんですよね。なので、推進することはできると思うんですけど、例えば極端にリスクを嫌うというか、マスのついでにデジタルがあるとかですかね。

竹下 だから事業全体の主管のところで、いきなり内製化するという判断というよりは、例えば新規サービスでやってみるとか、切り出してでもやはり自社にナレッジを蓄積して、自分たちが使えるようになって、もっといい組み合わせが何なのかみたいな、そういうチャレンジをすべきなんだろうなっていう気はしますね。

その中で、勉強のためだけにやるというのは現実的に難しいので、短期的な利益と少し先の未来をうまくすり合わせたストーリーを考えてチャレンジする。社内起業家みたいな革命家が本当に必要なんだろうなという気がします。

田中 その推進を加速したり、関係各位を巻き込んだりするためには、外部のパートナーとの協創やツール導入も、ひとつの手段ということですね。業界の競争関係を崩し、新たな価値を創出することは、業界全体の改善に繋がる大きな一歩ですし、すごく我々と御社の親和性の高さを感じました。未来を見据えた変革と新たな価値創出が、デジタル広告業界の未来に繋がる。本日は貴重なお話をありがとうございました!

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